愛知大学記念館(愛知大学東亜同文書院大学記念センター)

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活動報告

【2/21開催】シンポジウム 「海外からの大学引き揚げをめぐる問題とその位相 :東亜同文書院から愛知大学への人事的接合性と自国文化への接合」

2016221日(日)午後1時から、愛知大学豊橋校舎本館5階において愛知大学東亜同文書院大学記念センター主催のシンポジウム「海外からの大学引き揚げをめぐる問題とその位相-東亜同文書院大学から愛知大学への人事的接合性と自国文化への接合-」を開催しました。
2012年から開始している私立大学戦略的基盤形成事業「東亜同文書院を軸とした近代日中関係史の研究」の一環である本シンポジウムは「書院から愛知大学への接合性」グループが中心となって行ったものです。

報告1「本間喜一-東亜同文書院大学・同呉羽分校・そして愛知大学-」
藤田佳久(愛知大学名誉教授・東亜同文書院大学記念センターフェロー)


報告2「小岩井淨とその時代-1945年前後を中心に-」
三好章(愛知大学現代中国学部教授・東亜同文書院大学記念センター長)

報告3「東亜同文書院大学教員と愛知大学教員の人事的側面における接合性」
加島大輔(愛知大学文学部准教授)


報告4「東亜同文書院大学から愛知大学へ「継承」されたものは何か-教員の系譜から-」
広中一成(東亜同文書院大学記念センター研究員)


報告5「新中国建国初期の大学再編-上海の大同大学の再編を事例として-」
武小燕(名古屋経営短期大学講師)

報告6「旧制愛知大学予科への転入予科生は404人」
小川悟(表現技術研究所代表、愛知大学昭和
33年卒業生)

報告に先立ち、冒頭の川井伸一愛知大学長のあいさつに続き、今回は神野信郎氏にごあいさつをお願いしました。神野氏は愛知大学名誉役員という称号をお持ちであることからわかるように、長年愛知大学の理事として大学経営に関わってこられました。それだけでなく、お父上神野太郎氏は海外からの大学引き揚げという特殊な事情を理解され、創設期の愛知大学への物心両面にわたる支援をされた方でした。シンポジウム当日の神野信郎氏のごあいさつは、創設期の愛知大学教員と神野家のつながりの深さにも触れていただきました。

最初の藤田報告、次の三好報告は、神野氏のごあいさつとともに「人物」に中心を当てている点で一つのまとまりをなしています。これら二つの報告は本間喜一、小岩井淨という東亜同文書院大学から引き揚げ、愛知大学設立に奔走した人物に焦点をあてたものです。
このうち、藤田報告は本間の生い立ちからの経歴、またその出身地である山形県川西町(旧玉庭村)の風土にも触れながらその思想的バックグラウンドを探るものでした。本間はその後上京しますが、そのなかで「パイオニア精神とバランス感覚」「変化の客観視」「責任論」「理性ある正義とベースに法哲学」などの姿勢を身に着けたとします。また、愛知大学設立には呉羽分校での大学再編の議論がベースにあったことを明らかにしました。
三好報告もまた、小岩井の生い立ちから説き起こし、その学歴の上昇とともに見えてきた国家像が小岩井自身の理想とかけ離れていたこと、それでも小岩井は学歴によって得られた地位に安住することなく活動していくこと、しかし結果的には思想的転向を余儀なくされたことを示しました。これはいわば小岩井の挫折であったわけですが、その後上海の地で「自由」を経験することで「思想的、精神的休養」がなされ、そしてさらにその期間に知り合った本間との関係がその後の愛知大学設立につながっていくという、小岩井の思想的遍歴を明らかにしました。

これら「人物」に迫った報告に続き、東亜同文書院大学、また愛知大学の教員たちに焦点をあてたのが次の加島報告、広中報告です。
まず加島報告では、東亜同文書院大学、愛知大学それぞれの学部開設時、創設時の教員層の履歴分析を通じて、両者の関係性を明らかにしようとしました。書院大学は「実業」性、そして愛知大学ではアカデミズムが教員層を支配していたこと、またそのアカデミズムが大学のない土地に新しくそれを立ち上げるのに役割を果たしたのではないかということ、また愛知大学創立期に東海地方出身者が増えることで地縁ができてきたのではないかということを論じました。
広中報告は、東亜同文書院から愛知大学に「継承」されたものを、教員を「物差し」にして検討するという課題に基づいたものです。1900年に根津一によって書かれた「興学要旨」「立教綱領」が示したのは、儒学の思想を根本にして実学を学ばせるということでした。そのいわゆる「根津精神」が、根津の後任として倫理を担当した山田謙吉とその子息・厚に引き継がれていくことを示しました。さらにそれは、愛知大学の教員ともなった斎伯守によって継承されていくことを論じました。

さらに本シンポジウムの課題を深めるために最後に二つの報告が行われました。まず、武報告は、中国を舞台として、一つの大学が国家権力の変動とともにいかに変容していくかを明らかにしました。その変容を推し進めたのは、単に新しい国家権力による制度的な側面だけではなく、中国に伝統的に存在する文化的側面と、それを支持する学生層からの圧力によっていることを明らかにしています。武報告は、そうした圧力が大学教員層との軋轢を生んでいたことも指摘しました。
小川報告は、そのタイトルからわかるように、愛知大学旧制予科への転入生はいかなる学校から移動してきたのかを明らかにしたものです。転入者本人への聞き取りも含めて行われた調査の結果では、書院大学出身者が約4割、それ以外の学校出身者が約6割という量的側面とともに、具体的な学校名も含めて明らかにされています。「個別情報の積み上げ」とする本報告は、愛知大学の学生に焦点をあてて、基本的な状況を明らかにした研究となっています。

 

 

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