このたび、文科省より「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の採択を受け、事業開始の1年目(2012年度)は、当センターがある大学記念館が新たな研究拠点になることで、博物館相当研究施設に近づけるため収蔵庫を新設しました。
今まで収蔵庫はありましたが、収蔵庫機能としての課題があったことから、「火災や地震などの自然災害、温度や湿度、汚染物質から貴重な資料を守る収蔵資料庫」とのコンセプトのもと、耐火設備の収蔵史資料室を増設しました。これにより、センターが保持する貴重な史資料を保存・活用する施設が完成しました。
◆耐火性能について
愛知大学では紙媒体史資料が多くを占めるため、火災対策は最重要課題の1つです。火災対策にあたっては、耐火構造である既設室のコンクリート壁を利用し、開口部である窓際に耐火間仕切壁を構築しました。また、廊下側に関しましても同様に入口の1部を耐火壁によって閉鎖し、唯一の出入口には博物館・美術館等に使用される耐火性能に優れた特殊扉(収蔵庫扉)を設置しました。これによって、もし火災が起きた場合でも、焼失のリスクから守ることができ、貴重な史資料を熱による劣化から防ぐことができるようになりました。火災時でも、室内温度は80℃以下で30分間維持できる(30分後も大幅に温度があがることはない)など、史資料消失を免れたものの展示資料としての価値がなくなるといったことを逃れることができます。
◆環境性能について
貴重な史資料を後世に残すためには、突発的な自然災害のほか、日々の劣化にも対応する必要があります。特に湿度変動による被害はカビや史資料の老朽化を促進し、場合によっては修復が困難な状態になる場合もあります。本改修工事では、収蔵史資料室内の湿度を安定させるために、昨今博物館・美術館に多く採用されている㈱クマヒラの調湿パネル(キュアライト)を用いました。調湿パネルは文字どおり、壁材が湿気を吸ったり吐いたりし、室内湿度を安定させるパネルです。空調が停止した状態でも庫内の湿度が安定するため、東日本大震災においても空調機が停止した状態の中で、庫内湿度環境を安定させた実績があるそうです。
また、空気質の問題に関しても、コンクリート等から放出されるアンモニアや木材や有機物から放出される酢酸・ギ酸などの有機酸は史資料の退色や劣化を促進させますが、これら汚染物質に対しても収蔵庫独自の工法であるGV工法(ギャラリーボールト工法)を採用することによって、文化庁が推奨するアンモニア・有機酸の濃度推奨値を達成することができました。