見出しについて、本センター関係者が東亜同文書院に関する研究成果を報告します。
日時:2017年10月29日(日)午後1時~3時
場所:愛知大学名古屋キャンパス L801教室
座長:三好章(愛知大学)
報告1:石田卓生(愛知大学)「1937年、書院生従軍について——第34期生原田実之の記録を中心に」
報告2:森健一(たちばな学園)「東亜同文書院大学学生の学徒出陣について」
報告3:藤田佳久(愛知大学名誉教授)「書院生の見た近代東アジア——「東亜同文書院大旅行」再考」
本企画は、東亜同文書院の学生たちの近代東アジアでの活動を多面的に考察するものである。
1901年上海で開校した東亜同文書院(後に大学)については、日本の対外拡張を目指す意味でのアジア主義という政治的な側面に重点がおかれ理解されてきた。しかし、実質的な後身校である愛知大学が1993 年に東亜同文書院大学記念センターを開設し、さらにこれが文部科学省オープン・リサーチ・センター整備事業(2006年度−2010年度)や文部科学省私立大学戦略研究基盤形成支援事業(2012年度−2016年度)に採択される中で実証的な研究が推進され、そのビジネススクールとしての姿や、この学校が東アジアを主な対象とする地域研究に精力的に取り組んでいたことが具体的に明らかとなってきた。こうした東亜同文書院理解の変化は、日本だけの現象ではない。1945 年日本敗戦時に上海の東亜同文書院本校から中国側に接収された学生によるフィールドワークの成果物が『東亜同文書院中国調査手稿叢刊』(国家図書館出版社2016年)として公刊されたことは、東亜同文書院の東アジア研究が中国においても学術的に評価されつつあることの証左である。
以上の状況を踏まえつつ、本企画では、東亜同文書院の学生たちの視角を中心に考察を進める。なぜならば、東亜文書院は学校なのであり、経営者や教員、カリキュラムといった学校運営側の事柄以上に重要なのが学生の実体験にあると考えるからである。そこには、「大旅行」と呼ばれた東アジアを対象とするフィールドワークという学内の教学活動もあれば、日中間の戦争という学外の問題との関わりもあった。
本企画は、たんなる東亜同文書院の学校史ではない。長く国外にあって東アジアと向き合っていた東亜同文書院を事例とすることによって、近代以降の日本人の東アジアについての取り組みを再考しようとするものなのである。